同棲を始めて5年目の秋、あなたはふとカレンダーを見返して、先月身体を重ねた日を数えようとする。指が止まる。0か、1か。思い出せない。友人と食事の席で「みんなどれくらいなの?」と聞きたくなる夜が、月に一度は来る。「私たち、少ないのかな」「これって普通なのかな」——この問いに、正確な数字を持って答えられる人は、実はほとんどいない。

この記事は、その数字を出す。ただし、数字の目的は"平均"を確認することではない。数字を材料にして、二人で頻度と満足度を話せる状態を作ることが目的だ。

数字を見る——同棲期間別の平均

複数の国内・海外調査を横断すると、同棲・結婚カップルの性交渉頻度は、期間が長くなるにつれて緩やかに減少するのが標準像だ。目安として、同棲1年目は週1〜2回、3年目は月2〜3回、5年目は月1〜2回、7年目以降は月1回未満、というのが複数調査の平均像に近い。ただし、この数字はあくまで平均であって、健康な範囲ではないことに注意してほしい。

もう一つ重要な数字を挙げると、既婚・同棲カップルのうち"1か月以上の性交渉なし"に該当する層は、日本の複数調査で60〜65%を推移する。5年目のあなたたちが月1回であれば、平均より少し上ということになる。「うちは少ない」と感じている多くの人が、実は分布の真ん中付近にいる。

この事実だけで、少し呼吸ができるようになるはずだ。あなたたちが特殊なのではない、時代の分布が下がっている。

頻度より満足度の話

ここで、頻度の話をしていた土台をひっくり返す。Muiseらが2016年に発表した研究では、性交渉の頻度と関係満足度の相関は、週1回を超えたあたりで頭打ちになることが示された。つまり、週2回でも週3回でも、関係満足度はほとんど変わらない。逆に、月に1回未満でも、二人の合意があれば満足度は落ちない。

ドーパミン受容体の順応の話は別記事「マンネリはあなたのせいではない、脳のせいだ」で詳しく扱ったので、ここでは触れないが、要は頻度は満足度の代理指標ではないということだ。二人が身体を重ねる頻度がどうであれ、頻度に対する二人の解釈が一致していれば、関係は健康な状態にある。

逆に、頻度が週2回でも、片方が"少なすぎる"、もう片方が"多すぎる"と感じている場合、その関係には摩擦が積み上がっていく。数字の絶対値ではなく、数字に対する二人の意味づけの一致が満足度を決める。

「少ない」を問題化する前に

「うちは少ない」と感じたときに、まず問うべきは3つある。

一つ目、二人とも"少ない"と感じているのか、片方だけなのか。片方だけが少ないと感じている場合、それは頻度の問題ではなく、意味づけの差の問題だ。この場合、頻度を増やしても、意味づけが一致しないままだと満足度は上がらない。

二つ目、いつから減ったのか、きっかけはあるか。同棲開始・引っ越し・仕事の異動・出産・介護の始まり——生活の大きな変化のあと3〜6か月で頻度は自然に落ちる。この期間の減少は"問題"ではなく、生活の再編に伴う正常な調整だ。半年経って戻らないなら、次の層を疑えばいい。

三つ目、頻度ではなく、質はどうか。月1回でも、二人ともが満たされているなら、そこには介入すべき問題はない。月4回あっても、義務感の消化になっているなら、頻度を減らして質を戻したほうがいい。数える対象を、回数から満足の深さに変える。

二人で数字を話す

この記事の一番実用的な部分は、ここから先だ。頻度の話を二人ですると、多くの場合、片方が防御姿勢に入る。「責められている」と感じるからだ。責める話ではなく、二人で分布のどこにいるかを確認する話だとフレーミングを変える必要がある。

切り出し方の一例を、Gottmanが提唱する"ソフトスタートアップ(Soft Start-up)"の原則に沿って挙げておく。感情でぶつけず、状況の描写から入る。「最近、私たちの夜が減っているのに、二人とも触れずにいる気がして」——これは責めではなく観察だ。次に、自分の気持ちを"私"主語で言う。「私は、それが少し寂しい」。最後に、相手への提案は開いた質問にする。「あなたはどう感じてる?」

この3段階を守るだけで、頻度の話は喧嘩にならない。防御に入られない話し方ができれば、二人の実際の意味づけがようやく見えてくる。片方は"少ない"と感じ、片方は"疲れているだけ"と感じているかもしれない。それが分かった時点で、対処は具体的になる。

もう一つ、二人で数字を話すときのコツを一つだけリストで挙げる。

今夜、一つだけ試すなら。今月の頻度を数える代わりに、"身体が近かった瞬間"を一つだけ思い出してほしい。それを明日、相手に一言伝える。それが、次の一夜の質を変える。

結論

5年目のあなたたちの頻度は、統計的にはほぼ標準的な位置にある。頻度は満足度の代理指標ではない——週1回を超えれば関係満足度は頭打ちで、月1回でも二人の意味づけが一致していれば健康な範囲だ。「少ない」を問題化する前に、二人で数字への意味づけを話す。数字ではなく、数字に対する二人の一致が、関係の健康度を決める。それが、この記事の一番シンプルな結論だ。